2008年04月22日

恐るべし!キタキツネ

夏の北海道、
釧路の友人の車で、然別(しかりべつ)湖まで足を伸ばした。

道東の夏は20度を超える日は珍しい。
日差しは強いが湿気は少なく、カラッとした夏がさわやかで心地いい。

鬱蒼たる林道は、両側が原生林に深く覆われ、頭上には時折のぞく広く大きな空。
木立に涼風が吹きわたる静寂の森の道。

私の大好きな北の大地・道東の夏。
時折濃霧が出ているが、絶好のドライブ日和だ。

恐るべし!キタキツネ

太古の湖へと続く、まっすぐな林道を走っていると、
突然、友人が急ブレーキをかけた。

林の中から何かが飛び出してきたらしい。
エゾシカか?熊か?それとも…ヒトか?

ほらっ!
停止した車のちょっと先を、友人が指し示した。

車のすぐ前方正面に、かわいい子ギツネがちょこんと座っている。
子キタキツネだ。(なんか言いにくい!)

キタキツネを呼ぶ方法なら知っている。
何度もテレビで見たから…。

ルールルルル、ルールルル、ルールルル♪
私はすっかり「北の国から」の、幼き日のジュンとホタルだべさ。

窓から手を伸ばそうとする私を、友人がいさめた。
彼らは病原菌を持っているので、かじられたら大変だと言う。

それに、近くに親がきっと隠れて見ているはずだと言う。
左右の茂みを見回すと…、確かにいた!

すぐ傍らの林の土手の上から、姿勢を低くして警戒しながら、ジッとこちらの様子をうかがっている。

グリコ事件の犯人ソックリの、
キツネ目をした母キタキツネだ!

霧雨と草露で濡れたのだろうか、体躯もかなり痩せてみえる。
よほど腹を空かせているのだろう。
きれいな毛並みではなく、
キタキツネというよりも。キタネキツネというべきか…。

視線が合うと、「アンタも好きねえ」と言わんばかりに、
大きな口をニンマリ開けて、ようよう腰を上げて車に近寄って来る。

恐るべし!キタキツネ


北海道名物「おねだりキツネ」の登場だ。
これが、おねだりヒグマだったら結構ヤバイッ!

幼いわが子をダシにして、
走行中の車を止めるなんて、まるで当たり屋か美人局(つつもたせ)の手口。
若い娘を使って酔っぱらい親父を引っ張り込む、どこかの飲み屋のママのようだ。

友人の座る運転席と助手席の私のドア付近を行ったり来たりしながら、鋭い眼光で威嚇する。

本人は愛想を振りまいているつもりかしれないが…。
近くでみると、瞬きをしないキツネの目って、結構恐―い!

フンフンフン、しきりにエサをねだっているようだ。

可愛いわが子を轢きそうになったこたびの不始末を、
どうやら示談(エサ)で済ませてやろうという腹らしい。
菓子だせ!飯出せ!コンコンコン…ってか。

運良くと言うか運悪くと言うか、私たちは食べ物を何も持ってない。

絶好の被写体だからと、とりあえず写真一枚だけを撮って、
じゃあなぁと、そのまま車を出発させたのだった。

子キタキツネは可愛かったよなぁ、親ギツネきは少し恐かったけど…。

そんな軽口を叩きながら、ゆっくりと車を走らせ始めた。

その少し後、
バックミラー越しにふと後ろを見ると……。

ぎゃあッ!

恐るべし!キタキツネ


ナント、さっきのキタキツネ親子が追いかけて来るではないか!
眼はランランと、大きな口に長い舌を垂らして、マジ走りで追いかけてくる。

ひぇーッ、逃げろッ!

慌てて車のスピードをあげたが、一向にあきらめる気配がない。
必死に追いかけてくる。

よほど腹を空かせていたのだろう。
いや、よほど腹にすえかねたのだろう。
エサもやらずに、写真だけタダ撮りしたのだから。
(しかも、オールヌードだったし…)

母キタキツネと子キタキツネの2匹のキタキツネは、
まだ怒りの形相で必死に追いかけてくる。
(ええい、言いにくいッ)

もちろん、車との距離は次第に開くが、まだあきらめずに追いかけてくる。
子供を轢きそうになった責任とれーッ!肖像権の侵害だぁーッ!食い物よこせーッ!コンコンコン

親子で追走してくるその様は、まるでクロネコヤマト便かキタキツネ宅急便か…。

苦笑しつつも、どこか恐怖感が漂ってくる。
これまでの人生、生ギツネに追いかけられた経験など一度もないのだから。

もしかして、キタキツネ軍団に包囲されたりして。

あやつは実は妖狐で、いくら逃げてもまた元の場所へ戻ってたりして…とか。
最後は捕まってしまい、
歳の離れたあの子ギツネとキツネの嫁入りなんぞさせられたりして…とか。
秋風が吹く頃、鶴岡にそんな風の便りが届いたりして…。トホホ

そういう妄想に耽るわけはなかったのだが、突然、2匹が追いかけるのをピタッと止めた。

ン…?

どうしたの?あきらめたの?許してくれるの?

恐るべし!キタキツネ


距離を置き、そっと車を止めてその様を見ていると、
親子で耳を立て、
(もともと耳はたっているが…)
何やらヒソヒソ相談している…ようだ。

と、親ギツネはソソクサと道路の法(ノリ)面を登りだした。
子ギツネは、路肩の草むらへハタと身を伏せた。

ン…?

ほんの少しして、
ババババ・バッ、ババババ・バッ、ババババ・バッ、というバイクのエンジン音が、
遠くから次第に大きくなってくるのが、私たちの耳にも聞こえてきた。

私たちを追いかけてももう無理だと悟り始めた頃、
うまい具合にバイクのエンジン音が近づいて来るのを聞きわけたらしい。

で、どうやら次の段取りというか、その仕込みに入ったということらしい。

ライダー君、ご愁傷様。
君もきっと同じ手口でやられますなあ
エサもやらずに写真なんか撮ると、足なんぞ噛まれたりして…。

もし、次のカモが来なかったら、あの親子キツネはどこまで追いかけてきただろうか。

青函トンネルを歩いたり、海峡列車に飛び乗ったりして海を渡り、
もしかして鶴岡まで…。ブルルッ!

そう言えば、随分前のズームイン・朝!で、
青森県の山中で尾の白い、足首の黒いキツネ(多分、キタキツネ)が見かけられたと、生放送してた。

ひぇぇぇーッ、やばいッす!
青函トンネル、すぐに埋めてくれぇ

北のキタキツネ、恐るべし!
(ちなみに南のキタキツネはおりません)

この話はノンフィクションです。
写真は、その時の然別湖の母キツネだったと思います。
恐るべし!キタキツネ




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Posted by エゾリス at 16:00│Comments(5)北海道な話
この記事へのコメント
私も北海道で始めてキタキツネに遭遇したときは
道路を横断して危うく轢きそうになったときですね~

可愛くて車を止めて触ろうとしたら友達に
触るなって言われた事を思い出しました。
エキノコックスに感染するかも。
っと言われたことがあります。

キタキツネは可愛いです♪
ああ・・・北海道が懐かしいな~
Posted by キョン at 2008年04月22日 16:46
あ〜〜〜~。~♪

おもしゃい!!!
Posted by 藤丸 at 2008年04月22日 22:44
キョンさんへ
北海道、いいですよねぇ。
退職したら、いっぱい遊ぶぞぉ。
季節移住したいなあ。

藤丸さんへ
ダラダラ書いた長文、
読んでもらて、もっけですぅ。
Posted by エゾリス庄内風味 at 2008年04月23日 05:08
おもしゃいっけ♪
でも、想像したらゾッとしちゃった汗
化けてでられたらどうしよ・・・泣
Posted by 優 at 2008年04月23日 13:28
優さんへ
ウケてもらって、よかったです。
エゾシカ・キタキツネは運がいいと、結構遭遇できますよ。
エゾリスも…。
運が悪いとヒグマと、遭遇できます。
私は、まだ野生のヒグマだけは見たことがありません。
Posted by エゾリス庄内風味エゾリス庄内風味 at 2008年04月23日 19:55
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